Secret GardenⅡ

アンティークや可愛いもの、そして奈良とつよしくんが大好きです。

クジラの彼

先週病院のハシゴをしたときに読了した有川浩さんの『クジラの彼』。

クジラの彼

クジラの彼

久々に有川さんを読みましたけど、やっぱりサクサク読めて好きだわー。
『恋する二人の間には、七つの海が横たわる。がんばれ女子、負けるな男子』という帯文句の通り、7つの恋物語が女子、男子両方の視点で読めます。
そして、この短篇集の特徴はもうひとつ。
史上最強”制服ラブコメ”だそうな。
制服と言っても学生じゃないよ。
陸自、海自、空自と言った自衛隊の方々メインです。
著者があとがきで「いい年した大人が活字でベタ甘ラブロマ好きで何が悪い!」と開き直っておりますが、そこまで開き直られると、返って恋愛小説を回避する傾向にある私でもむしろ普通に楽しめます。
恋愛小説も突き詰めてデフォルメすると一種のファンタジーなんだな、っていう感覚かな。(笑)
あ、でも、要所要所でその表現好きっていうか、そのセンス好きだーって思わされるので、やっぱりこの人は侮れないですよ。

それが一番よーく現れてるのが表題作の『クジラの彼』。
合コンで出会った史上稀に見る高物件の彼は、明らかに数合わせの見せゴマ要員だったのに、何故か同じく数合わせで取り立てて目立つ所のない彼女をお持ち帰り発言。
そのお持ち帰りの動機が、潜水艦乗りの彼にとっては潜水艦を『クジラ』に見立てて『潜る』と発言した彼女のセンスを気に入ったからなんですが、私はそういうセンスに引っ掛かる(っていうか、引っ掛ける)ところが好きだわ、と。
ま、現実的にはあんまりありえんパターンだろうな、とは思いますが。
世の男子がみんなそんな素敵な感性の持ち主ならいいのにねー。
ちなみにこのカップルのその後は同作に収録の別の短編『有能な彼女』で読めます。

ほかの短編では『国防レンアイ』と『ファイターパイロットの君』が好きかな。
『国防レンアイ』は「ヒロインとしてあるべき限界を超えた気がします」と担当さんにセーブされながらも強引にそのラインを飛び越えた、というなんとも赤裸々な陸自のレンアイ事情が笑えます(?)。
いや、主人公の伸下三曹からしたら全然笑えない話だけどねー。

『ファイターパイロットの君』は著書第2作目の『空の中』のスピンオフだそうですが、既婚者(しかも子持ち)女性パイロットが空を飛び続ける大変さ、というのがしみじみ感じられます。
それに対して、義父母の理解がないのが、人ごとながら腹立つんですけど。
「娘より飛行機の方が好きなのよ」って孫に吹き込むジジババって最低だわー。
でも、それをしっかりフォローする旦那さんが素敵なんです。
シビアなパパの話を泣きながら受け止める5歳児の娘も素敵だけどさ。

有川さんの本は、素敵な恋のビタミンが欲しいわって時に読むと栄養補給できますよ。(笑)