Secret GardenⅡ

アンティークや可愛いもの、そして奈良とつよしくんが大好きです。

神様のカルテ

登っても、登っても辿り着かないエベレスト登山のように(いや、登ったことないけどさ)果てしなかった研修も、私が意識を半ば飛ばしてる間にどうやら9合目まで辿り着きました。
ある意味、今日が最大のクライマックスだったわけですが、疲れ果てて思考力も判断力も本来の2割程度しかない状態だったので、甚だ消化不良な結果に。(^_^;)
あー、もう、全然満足いく結果じゃなくて、自分が腹立たしいやら情けないやら。

そんな状態の中読んだのが明後日から映画が公開になる『神様のカルテ』by 夏川草介

神様のカルテ

神様のカルテ

史上初、2年連続本屋大賞ノミネート作品(第2弾もあるのね)だそうですが、すみません、全然知りませんでした。(^_^;)
ある日ぼへーっと見てた嵐の番組で、主人公の医師、栗原一止(イチト)を演じる桜井君が、「夫婦揃って敬語を話す(一止の妻榛名役は宮崎あおいちゃん)のっていいなーと思って」と言ってるのに、何やら風変わりでちょっと面白そうかも?と思ったのが手に取るきっかけだったという。
あと、表紙のイラストを手掛けた人がですね、私の好きな有川浩さんの『植物図鑑』と同じだったんです。
で、これは買いだな、と。(笑)

物語はかいつまんで言うと、信州にある24時間、365日対応を掲げる本庄病院
で働く29歳の内科医である一止が、医師不足で過酷な地方医療の現実に直面しながら、自分の人生を模索していく、という感じ。

著者は現役の医師だそうで、バリバリの医療モノだとちょっと苦手かも、と思ったりしたのですが、実際読んでみると全然そんなことはなく、一止や彼を巡る人々との交流が終始温かく、そして、時にほろりとさせながら、ゆるゆると描かれています。
特に奇を衒ったエピソードはないけど、出てくる人がみんな『いい人』で、読んでるとすごく癒されます。
『心に灯火がともるような物語』と解説にありましたが、まさにそんな感じ。
暗い夜道を歩いていたら、ぽぉっと小さく明かりが見えて、それがずーっと程よい加減で照らしてくれてる、みたいな。

バリバリの医療モノではないにしても、大学病院の最先端医療から零れ落ちた患者も受け入れてるような病院が舞台になってるんで、もちろん患者の死に直面する場面もあります。
過酷な終末医療の実態も垣間見えるし。
でも、なんか苦いものを飲み込まされたなって感覚には不思議とならないんですよね。
語り手の一止の眼差しの優しさということもあるだろうし、夏目漱石の『草枕』を敬愛する彼の、まんま漱石先生な語り口がうまい具合に緩衝剤になってるなー、と。

最後に明かされる一止の風変わりな名前の由来や、彼が迷いながら答えを出す人生の哲学みたいなものもなるほどなーと腑に落ちて、心地よい余韻が残る作品です。
そして、不覚にも(?)終盤私は泣かされてしまったよ。
それもまた心地よい涙でしたがね。(笑)
読むとなんか確実に浄化されるものがあるんじゃないかな。

主人公・一止のバカみたいに忙しい職場の現状も、ある意味わが身を彷彿とさせて(^_^;)俄然感情移入してしまうってのもありますが。
まあ、一止は家に帰れば『最高』に可愛らしく、よく気の付く細君のハルがいる分、幸せだと思うけどぉ。
ああ、私もハルみたいな細君が欲しい。(は?)

最後に映画の予告を貼り付けておきます。