Secret GardenⅡ

アンティークや可愛いもの、そして奈良とつよしくんが大好きです。

インシテミル

だいぶ毒素が抜け出てきたことを実感しつつ、今日は朝9時ぐらいまで寝ておりました。
若干、まだ喉に違和感というか、痰が絡んで苦しいのですが。(美しくない話でごめんなさいねー)
多分、これから快方に向かうでしょう。

さて、本日も基本おうちでまったり。(途中整体に行くために1時間ほど外出はしましたけども)
そこで、きぃさんから借りていた『インシテミル』を読了しました。

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)

ホリプロ50周年記念とかで映画にもなったので、タイトルと内容はうすーくご存知の方も多いのでは、と思われるので一々あらすじは説明しませんね。
っつーか、ミステリなのであらすじ書いたらネタバレになっちゃうし。(^_^;)

とりあえず、さらっと感想などを。
きぃさん曰く、登場人物それぞれが薄っぺらく、感情移入しづらかったとのことですが、私はなんというかそれすらも俯瞰して読んじゃった感じ、かな?

作中にも引用されている『そして誰もいなくなった』に代表されるクローズドサークルものと理解して読めば、それなりに楽しめるというか、娯楽小説としては十分に合格点を出せる作品だと思います。

タイトルの『インシテミル』とは、「ミステリに淫してみる」という意味だと作者自らが語っているそうなので、余計な感情表現やら登場人物の背景は気にせず、思いっきりトリックに浸りなさいってことなんでしょう。

作中に出てくる古今東西のミステリの引用も、それらに対する作者なりのオマージュというか、それを自分なりに料理したらこんなことも出来るんだぞ、どうだ読者諸君、という作者からの挑戦状のようにも思えたり。

ま、ぶっちゃけ主催者側の悪趣味さは時々鼻を付く感は否めませんが、だからこそ「雰囲気の読めないミステリ読み」が幅を利かせる余地があるんだろうなー。

知的な心理戦とやらを体感してみたい人は、ある程度楽しめる作品だと思いますので、一読してみてね。

でも、キャラがそれぞれたってないと嫌なのー!と言う人にはオススメしませんが。(爆)

ってこんな感想でよかったかしら、きぃさん?

追記
昨日感想を記した『インシテミル』について、更に思いついたことがあるので追記します。
基本的に、私も小説を読むときには人物重視、人物がきちんと描けてないとダメなタイプですが、この作品についてはそういった過剰な人物描写は返って不要かと。
純粋なクローズドサークルものを楽しむ上で、より重要なのは人物ではなく暗鬼館という建物の構造であり、そこで行われる実験の手順及びルールです。

作中、登場人物の内面以上に、暗鬼館の内部描写が緻密に描写されているのは、いかにこの館が密室性の高い逃れられない場所であるのかというのを読者に知らしめるためです。
この描写があってこそ、主人公の体験する『夜』が例えようもないぐらい恐ろしいということがリアリティを帯びてきます。

また、それぞれのキャラの内面を描ききってしまうと、生き残ったメンバー、特にFが暗鬼館での出来事をどのように捉えているのかという描写が逆に嘘っぽくなってしまうんじゃないかなー、と。

主人公の結城についても、彼は「空気の読めないミステリ読み」と作者が位置づけているだけあって、普通とは違う感覚を有しています。
その彼の内面を描ききってしまうと、彼のイレギュラーさ、空気の読めなさが生きてこない。
数少ない彼についての描写で繰り返し「楽天的」と語られるのも、彼が空気の読めない存在であることの象徴です。
したがって、空気の読める私たち読者はこの結城という主人公に安易には同調できないわけです。
この小説の場合、主人公結城に感情移入して読むよりは暗鬼館での出来事をモニタリングしているであろう主催者側の立場に立って読むのが正解かと。
そういう読み方を出来る人にはこの小説はよく出来た娯楽小説と言えるでしょう。