永遠の友だち、ピーター・ラビット展
忙しい合間を縫って、かねてより行きたかった『ピーター・ラビット展』に行って来ました。
自他共に認めるウサギ好きのルーツは、おそらくこのピーター・ラビットかと。
アンティークなウサギちゃんにハマる以前から、私の本棚には『Beatrix Potter The Complete Tales』という総ページ数400ページの分厚いコンプリートブック↓が収蔵されてたりします。
来年でPeter Rabbitの物語が日本語で出版されて40周年だそう。
最初のThe Tale of Peter Rabbitがイギリスで出版されたのは1901年。
ということは、Peterったら誕生して1世紀ちょい経ってるのねー。
Beatrixが少女時代に彼女の家庭教師を務めたムーア夫人の幼い息子、Noelの病気見舞いとして贈った絵手紙(それを再現した巨大な絵手紙も展示してましたよ)をもとに、7年後絵本として作り直したものが私たちがよく知るPeter Rabbitのお話なんですけど、最初は自費出版されたものだって知ってました?
今回の展覧会ではその貴重は自費出版本も展示されてましたが、ちっちゃい手のひらサイズの本でした。
自費出版する以前に、いくつかの出版社に持ち込んで、出版を打診したもののことごとく断られたために、自費出版したのだとか。
こんなに可愛い絵柄なのに、断るなんて見る目が無いなーって感じですけども、カラーじゃなかったから興味を引かなかったんでしょうかね。
翌年、Frederick Warne社が出版に同意するのですが、その時出した条件がカラー原稿にすることだったため、今日のように色彩豊かなピーターたちにお目にかかれるわけです。
こうして1902年に出版された本はなんと1シリング(5ペンス)で売られたんですって。(やっすー!)
これ以降、1910年まで彼女は年2冊のペースで絵本を出版し、それによって得たお金で独立、Sawrey村にHill Top Farmという最初の屋敷を購入します。
この当時、女性が己の身ひとつで生計を立てるというのは大変なことでした。
ましてや、BeatrixはUpper Middle Classの裕福な貿易商を営む家庭の生まれでしたから、子どもの頃から将来はよき家庭の主婦となるように躾けられていましたし。(当人は必ずしもその価値観に染まってはいませんでしたが。)
彼女の生きたヴィクトリア朝はそういう時代だったんですね。
女性の社会的地位というものが極めて低かった。
彼女自身、献身的に取り組んだキノコ研究の論文を、女性であるとの理由だけで、受け入れてもらえなかったという挫折を経験しています。
しかし、それでもめげずに絵の才能を生かして親元から独立するんですから、当時としては並外れて才覚のあった女性だったんでしょう。(この辺りの才覚は貿易商として莫大な富を築いた祖父譲りらしいですね。)
その人生も中々に波乱万丈です。
35歳の時、彼女の編集者だったNorman Warneにプロポーズをされるものの、身分違いを理由に両親から猛反対を受けます。
が、6歳下の弟の説得により(この弟は両親に自分の結婚生活を13年間も秘密にしてたそうな^_^;)ようやく両親の許しを得たところ、お相手のNormanが急性白血病でなくなるという悲劇に見舞われることに。
それは婚約からわずか1ヵ月後のことでした。
なんというか、これだけでドラマになりそうな、いや、だからこそその半生が映画化されたのか。
ちなみに、展覧会を開催中の文学館では9月5日(日)にこの映画『ミス・ポター』↓の上映会が催されますよ。
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2008/02/08
- メディア: DVD
- 購入: 3人 クリック: 29回
- この商品を含むブログ (67件) を見る
1世紀を経てなお、30近い言語に翻訳され、世界中の子どもたちに親しまれているPeter Rabbit。
その生みの親であるBeatrixは人生の終わりにこう記しています。
If I have done anything - even a little - to help small children on the road to enjoy and appreciate honest, simple pleasure, I have done a bit of good.
「私がしたことと言えば、ほんのちょっと子どもたちのためにいいことをしただけよ」と謙遜しつつ、まんざらでもないBeatrixの顔が浮かんできませんか?