Secret GardenⅡ

アンティークや可愛いもの、そして奈良とつよしくんが大好きです。

阪急電車

昨日に引き続き、今年3冊目のブックレビューを。
古くからの友人Tにより勧められたのと、既読の『植物図鑑』がことのほか良かったので、手に取った『阪急電車』by 有川浩

基本恋愛小説は読まない私でも楽しんで読めるモノを書かれる人だな、というのがまず2冊読んでの感想です。
なんかこの方のはいける気がしてきたっていうかね、そういう感触がします。
バリバリ恋愛モノの、なんというか、おどろおどろしいのは嫌なんですけど。
所謂エグいのね。(^_^;)
例えば、人の彼氏を盗っちゃうとかさー。

この『阪急電車』の中にもそういう話は出てくるんだけど、有川さんにかかると、痛快を通り越して痛烈なしっぺ返しがなされるわけです。

恨みつらみはまだ消すことなどできないが、少なくとも刺したいように刺した。それについての心残りはない。

ってな具合に、そりゃあもう鮮やかにやり返すのです。
このカッコイイ女性を映画では中谷美紀ちゃんが演じるということで、ちょっと楽しみだわ〜。
かなりいい線いってると思いますよ。


しかし、心残りのないように『討ち入り』を果たした彼女も当然傷ついてるわけで、そんな彼女に「次の駅はいいところだから、一度降りて休んでいくといいわ」と声を掛ける老婦人がいたり。
どういい駅なのか、という辺りのくだりも読んでいてほっこりします。
実際に、有川さんが阪急電車に乗って見つけたほっこりポイントなのかな、これは。
そういうこの沿線ならではのエピソードが細かく拾ってあって、読んだ後は実際乗ってみたい誘惑に駆られる小説でもあります。
あの駅のあそこにはホントにあの光景が広がってるのかどうか確かめたい、っていうね。

片道わずか15分のローカル線に乗り合わせた人々の人生が少しずつ交錯して、色んなドラマが紡ぎ出されてるんですけど、直接会話しただけじゃなく、ちょっと会話を聞きかじっただけなのに、それが聞いた本人のその後をいい意味で作用するようなストーリーになってるところが、うまいなーと思います。

そうして、この人のおそらく最大の美点は、正しいことが最終的にはちゃんと正しくまかり通る、というところ。
読んでてちょっとこれってどうなのよ?という行動に出る登場人物にも、ちゃんと鉄槌が食らわされるんですよ。
常識的に考えて、それってダメだよねって行動も、実際の電車の中では哀しいかな、見て見ぬふりして見過ごされることが多いだろうに、この人の作品世界でははっきりNoって線引きされるところが読んでてとっても清清しいのです。

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

―今、この電車で奇跡が起きています。