Secret GardenⅡ

アンティークや可愛いもの、そして奈良とつよしくんが大好きです。

小説 言の葉は、残りて

こちらもずっと紹介したくてできてなかった本ですが、薬局での待ち時間を利用して、やっと紹介できたので、ブログにも再録しておきます。

インスタで知り合った@sadakko.sadako さんから教えて頂いた佐藤雫さんの「言の葉は、残りて」という本です。

これが処女作とは思えない筆致で、久々に面白い作家さんに出会えたなあと。

鎌倉幕府三代将軍、実朝と京から嫁いできた御台の信子との恋愛を史実を絡めて描いたお話なのですが、これを読むと暗愚な将軍という実朝のこれまでのイメージがガラリと変わると思います。

最近の時代考証では、父頼朝の残した裁決に基づき政を行っていた全うな将軍として見直されつつあるようですが、和歌に傾倒したのも、この本を読むと武力ではなく、言の葉の力を信じたかったのだなあと。

それを静かに寄り添って支えようとする信子の姿も素敵でした。

政略結婚ながら、ふたりが暖かい絆を育んでいく様子は微笑ましく、それだけにこの時代の残酷さも浮き彫りになります。

実朝の母、北条政子の鉄女ぶりやその妹阿波局の一見朗らかながら、毒を孕んだ物言いも、時代背景を深く知るとなるほどなーと納得する、確かな時代考証と筆致が素晴らしい作品です。