冬薔薇(ふゆそうび)
週末、庭仕事の合間に温室をのぞきに行ったら、冬薔薇(ふゆそうび)が咲いていました。
大輪のアンネ・フランクです。
年末の大寒波前につぼみを付けていたので、開花まで実に1ヶ月を要したことになります。
今年ほど寒いと温室に入れてあげても、なかなか開花に至らないんですね。
でもずっとつぼみが花開くのを待っていたので、こんなに大輪の花を咲かせてくれて嬉しい♪
香りもとてもいいんですよ(この香りをお伝えできないのが残念だわ)
この薔薇は花の中でもとりわけ薔薇が好きだったアンネ・フランクの形見として捧げられた薔薇で、日本へはアンネの父オットー・フランクから寄贈されたものが広まったそうです。
今回咲いてるのを最初に見た時、あれ、色が変わった?と思ったのですが、春に咲くアンネ・フランクはオレンジなんですよね。
うっすらオレンジが花弁に残ってますが、冬だと日照時間や温度で色が変化するのかな?と思い調べてみたら、この薔薇はつぼみの時は赤、開花後に黄金色、サーモンピンク、そして赤へと変色する特徴があることがわかりました。
さらに、これは育種家のヒッポリテ・デルフォルヘが、もし生き延びることが出来たなら、多くの可能性を秘めていたであろうアンネの姿をその花色の変化で表現したものだ、ということも。
アンネ・フランクという名前から彼女にインスピレーションを得た薔薇なんだろうな、というのはぼんやり思ってましたけど、調べてみたら育種家のヒッポリテは実際アンネの父オットーと旅行中に出会い、アンネの日記に深い感銘を受けていたことから自分の作り出した薔薇の中で最も美しいものにその名前を付けたんですね。
そして、ヒッポリテが作り出した薔薇を父オットーが育て、それが今度はイスラエルを訪問していた日本の合唱団とオットー夫妻が知り合ったことがきっかけで、この薔薇が日本にやって来ることになった、という。
なんともドラマティックな偶然が重なり合い、今その薔薇がうちにあるというのがすごい不思議というか、奇跡だなあ、と。
この薔薇、寒さや病気にも強く育てやすいので、これからも長く大切に育てたいと思います。
ちなみに、今日のタイトル冬薔薇(ふゆそうび)は俳句では冬の季語を指す言葉ですが、私が一番最初にこの言葉に触れたのは片山愁さんの漫画「君がいた夏」に収録されている東京浪漫細工Ⅱ月光憧憬(るなてぃしずむ)~美装の洋灯(らんぷ)です。
大正時代を舞台にした人と人ではないものとの邂逅と別離を描いた美しくも悲しいお話なのですが、作中の言葉遣いもとても綺麗なのです。
初版が1994年なので本としてはもはや手に入りませんが、検索したらKindle版はありましたよ。
宮沢賢治、あるいは長野まゆみ先生がお好きな方は絶対好きな世界観だと思います。
収録されている3篇はどれも儚くも美しく、もの悲しい結末ですが、大人になった今でも時折手に取って見返したくなるお話です。
思えば片山愁さんという人は、私に物語は必ずしもハッピーエンドではない、ということを教えてくれた人かもしれません。
冬薔薇の花言葉は「輝かしく」だそうですが、私はこのお話の影響なのか、冬薔薇と目にすると何かもの悲しさを感じてしまうのでした。